MICE誘致・営業に有効。3Dウォークスルーとバーチャル視察の経済効果

現在、グローバルなMICE産業はパンデミックを経て回復基調にありますが、エネルギー価格の高騰や人手不足、激化する都市間競争といった新たな課題に直面しています。特に会場選定における現地視察(サイトビジット)は、主催者と施設双方にとって最大のコスト要因かつ時間のボトルネックとなっています。本記事では、3Dウォークスルーによる空間デジタルツインがいかにしてこの課題を解決し、MICE誘致の成功と業務効率化をもたらすのか、その経済効果と戦略的価値を解説します。

MICE誘致における最大の課題は現地視察のコスト

MICEの会場選定において、主催者は失敗が許されないプレッシャーの中で意思決定を行います。そのため、最終決定の前には必ず現地視察が行われてきましたが、これには多大なコストがかかります。主催者側にとっては、航空運賃や宿泊費といった金銭的なコストだけでなく、多忙なプランナーが移動に費やす時間という機会損失も発生します。

一方で、受け入れ側の施設や都市にとっても負担は小さくありません。セールス担当者は視察の対応に数日を費やしますが、すべての視察が成約に結びつくわけではありません。初期段階の検討レベルの視察に多くのリソースを割くことは、営業効率を低下させる要因となっています。さらに、人気のある会場ほど稼働率が高く、視察希望日に会場が使用中であるため、実際の空間を見せられないという機会損失も発生しています。

2Dタイプのバーチャルツアーではこういった表現はできません

写真とは違う空間デジタルツインの革新性

こうした課題を解決するのが、Matterport(マーターポート)などの技術を用いた3Dウォークスルー、すなわち空間デジタルツインです。これは従来の360度パノラマ写真とは決定的に異なる技術的特性を持っています。

内部で測定できるので現地にいかなくてもサイズ感を把握できます

3D空間データによる正確な把握

従来のバーチャルツアーは定点の画像を繋ぎ合わせた視覚情報の提供に留まっていました。しかし、デジタルツインは空間の形状をスキャンした立体的なデータそのものです。これにより、Web上で天井高や搬入口の幅、通路幅などを誤差1パーセント以内の高精度で計測することが可能です。プランナーは自席にいながら、「機材が搬入できるか」「ステージのトラスの高さは十分か」といった技術的な確認を行うことができます。

全体像を俯瞰できるドールハウスビュー

MICEプランナーにとって重要なのは個々の部屋の内装だけでなく、会場全体の関係性です。3Dウォークスルーには、建物の屋根を取り払って全体をミニチュアのように見渡せるドールハウスビューという機能があります。これにより、メインホールから分科会会場への移動距離や、受付からクロークへの動線、トイレの配置などを直感的に把握することができ、平面図だけでは伝わりにくい立体的なつながりを瞬時に理解させることが可能です。

業務プロセスの変革とSDGsへの貢献

3Dウォークスルーの導入は、単なる広報ツールの追加ではなく、MICEのセールスおよびプランニングの業務フローを変革します。

企画および検討フェーズの効率化

物理的な移動を伴う視察を最終確認のフェーズのみに限定し、初期検討や詳細な技術確認をデジタルで完結させることで、コスト構造を劇的に改善できます。ZoomなどのWeb会議システムで画面を共有し、セールス担当者が3D空間を案内するガイド付きバーチャルツアーを行うことで、対面に近いプレゼンテーションが可能になります。遠方のお客様にも施設の魅力を十分に伝えることができ、成約率の向上が期待できます。

サステナビリティと地方創生へのインパクト

MICE産業においてサステナビリティへの対応は必須要件です。現地視察のための航空移動をバーチャルに置き換えることは、CO2排出量の削減に直結する具体的な脱炭素アクションとなります。また、デジタルツインは物理的な距離のハンディキャップを無効化するため、地方のコンベンションビューローや施設にとっても強力な武器となります。主要空港からの距離に関わらず、クリック一つでその場にいるかのような没入感を提供できるため、地方MICEの誘致促進にも寄与します。

導入事例に見る具体的成果

実際に3Dウォークスルーを導入した施設では、具体的な成果が生まれています。例えば、JPタワー名古屋ホール&カンファレンスでは、東京や海外といった遠方の主催者に対し、実際に訪問する前に詳細な仕様を確認できるツールとして活用され、確度の高い問い合わせの増加やリードタイムの短縮につながっています。

また、大阪市中央公会堂のような重要文化財では、歴史的な重厚感を損なうことなく、現代的なMICEニーズに対応できることを視覚的に証明しています。主催者は華やかな特別室の雰囲気を体感できると同時に、文化財特有の搬入制限などのロジスティクス面も事前に確認できるため、利用への不安を解消することに成功しています。

まとめ 次世代のMICEビジネススタンダードへ

空間のデジタル化は、MICE誘致や営業のための重要なインフラです。これまで不可欠なコストとして甘受されてきた現地視察をバーチャル化することは、コスト削減だけでなく、営業プロセスの加速、サステナビリティへの貢献、そして地方創生といった多角的なメリットをもたらします。3Dウォークスルーは単なる閲覧ツールを超え、主催者の不安を先回りで解消し、MICEビジネスをよりスマートで持続可能なものへと進化させる戦略的なソリューションです。

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