京都の会社、株式会社イザンのインターンシップ生、たいせつアーカイブスメンバー 田上です。
本日は大阪のシンボルのひとつである、大阪市中央公会堂の副館長にインタビューさせていただきました。
突然ですが、サントリーと聞くと何を思い浮かべますか?
お水、ビール、ジュースなどの飲料でしょうか?
実はサントリーは飲み物だけではなくさまざまな事業をされているんです!
その一つに指定管理施設の運営があります。
サントリーグループのサントリーパブリシティサービス株式会社(以下SPS)は、2004年より文化施設を中心に指定管理者制度に参入し、美術館として全国初の指定管理館となった「島根県立美術館」をはじめとして、現在、全国約20施設を運営されています。
指定管理施設の運営とは、地方公共団体に代わって施設の管理をするお仕事です。
この管理者のことを指定管理者と言い、指定された期間その施設の管理をするため、施設の持ち主とは少し違います。
そんな指定管理者というお仕事にどのように向き合っておられるのか、また指定管理施設である大阪市中央公会堂について、大阪市中央公会堂の副館長である守田亜矢子(もりた あやこ)さんにお話を伺ってきました!
大阪市中央公会堂とは?
大阪市中央公会堂は大阪市中之島にある国指定重要文化財で、岩本栄之助氏の多額の寄付によって1918(大正7)年11月に開館した歴史ある建物です。
かつてヘレン・ケラーやガガーリン、アインシュタインなども講演会を行った、大阪の文化・芸術の発展に深く関わってきた場所です。
100年以上の歴史を持つ大阪市中央公会堂ですが、実は今なお多くの人が集う公共の施設として活用されています。
大阪市中央公会堂の3Dバーチャルツアーはこちらからからご覧いただけます。
まるで建物の中を実際に歩いているかのように見て回ることができます。ぜひご覧ください。
SPSが大切にしている人との繋がりを、大阪市中央公会堂でも大切にしています
–SPS様がどのような思いを持って事業をされているのか、またその背景について教えてください。
守田さん:SPSは全国で指定管理事業をしています。
公共施設の運営を通して、地域の活性化に繋げることや、文化や芸術に触れていただく場を作ることはとても大事なことです。
私たちの企業は「人々のつながりができること」「社会に貢献できること」を大切にしており、大阪市中央公会堂においても「たくさんの人に来てもらうこと」「この場所でたくさん思い出作りをしてもらうこと」「貴重な文化財を守ること」を大切にしています。
生きた文化財を守るということが私たちの使命です
–どのような姿勢で文化や文化財に携わっておられますか?
守田さん:大阪市中央公会堂は1918年11月にできた非常に古い建物です。
古い建物ゆえ、何度も改修工事を経て今に至りますが、単に建物として残しているだけではありません。
現役の貸室施設として、集会室や特別室、会議室等をどなたにでもご利用いただける「生きた重要文化財」と考えています。入学式や式典、講演会やファッションショー、撮影等、毎日様々なイベントが開催されており、主催者様も参加される方にとっても大切な思い出となる場所です。これからの100年も長くお使いいただくために、私たちは建物を守っていく使命があると思っています。
その為、ご利用にあたっては皆様に様々な注意事項を遵守いただいており、利用の制限もたくさんあります。使い勝手が悪いと思われることもあるかもしれませんが、貴重な文化財を守る為にご協力をお願いしています。
新しい大阪を知るきっかけになれば
–お仕事の中で日頃意識されていることはありますか?
守田さん:大阪市中央公会堂に来ていただくことはもちろん、それをきっかけに大阪や中之島に関心を寄せていただけると嬉しいですね。
大阪の印象と言えば、お笑いと粉もんとか、ミナミの賑やかなエリアを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、大阪市中央公会堂の周辺は、川があり緑豊かでオアシス的なところや、大阪府立中之島美術館や東洋陶磁美術館、こども本の森といった文化施設も建ち並んでいて、素敵な場所です。たくさんの人が中之島や大阪に来るきっかけにこの建物を選んでほしいと思っています。その気持ちを忘れずにイベント企画などもしていますよ。
ガイドツアーや集会室の開放日などもあり、歴史や制作時のこだわりなどをお客様に伝えています。
見るだけでは分からないこともあるし、何より実際に説明を受けると思い出に残りますよね。
ガイドツアーの詳細はこちら→
https://osaka-chuokokaido.jp/news/guidetour.pdf
–元々みなさん大阪市中央公会堂について詳しかったわけではないかと思うのですが、どのようにして情報を得られているのですか?
守田さん:スタッフはお客様からご質問を受けることも多いので、休館日に研修などを実施して、歴史や内装のこだわりなど学ぶ場を設けています。学芸員の資格を持っているスタッフもおり、過去の古い資料や保存再生工事の報告書などから情報を収集して、スタッフ間で共有するなど、少しずつ知識を付けています。
また、大阪市中央公会堂によく似た近代建築が周りにたくさんあるので、一緒に視察に行ったり、文化財に触れることをしています。
やはり施設に対する愛着は大事だと思っています。
愛着があるからこそお客さまにも積極的にご紹介ができますし、利用に関する注意事項もどうしてダメなのか説明できるようになります。
職場には受付スタッフをはじめ、設備管理や警備、清掃員の方も含めて、大阪市中央公会堂に対する思い入れを強く持っている人が多いと思いますね。
最初から建物に興味がある人が多いわけではないけど、ここにいるうちにそうなっていくというか。
–来た時よりもどんどん好きになっていくのですね。
守田さん:そうですね、みんな建物への愛着やここを守らなきゃ、知ってもらいたい、という思いが強いですね。
思いは巡っていく
–大切にしたい、残していきたい場所はありますか?
守田さん:そうですね、全部、、全部ですね。
この建物は創建当時のまま残っているところと、平成の保存再生工事で修繕されたところがあるんです。
特別室の天井も当時は葉巻などを吸っていたため黒ずんでいたのですが、保存再生工事ではひとつひとつ丁寧にクリーニングして今の状態に蘇っています。
私は最初にこの建物を造られた方々もすごいけれど、保存再生工事で創建当時の姿に蘇らせてくれた職人の方々も素晴らしいなと思っています。
こうやって残してくださったものを次の世代にも永く残していかいかないといけないねと私たちも日頃から話しています。
だから例えば、”触らないでください”という表示を設置してお客様にお願いしています
–先ほどお話に出てきた保存再生工事はどのような経緯で行われたのでしょうか?
守田さん:元々この大阪市中央公会堂は、大阪にもたくさんの人が集える場所が必要だと考えた岩本栄之助が100万円という当時では巨額な大金を大阪市に寄付して建てられた大切な場所です。
しかし、老朽化が進み、設備面や機能性にも問題が出てきた為、一時は建物の取り壊しの案も出たそうですが、多くの市民からの保存の要望が集まり、同時に1万3千を超える市民や企業から多額の募金が集まりました。この募金活動は赤レンガ基金と呼ばれています。
それをきっかけに大阪市も多額の予算を組み、保存再生工事が行われ、今に至っています。
–岩本氏の市民への思いが、市民からの思いとして返ってきたということですよね。
守田さん:そうですね。
市民の方だけではないですけど、いろんな方が寄付をしてくださって建物は蘇って、またみなさんに使っていただけているので、思いは繋がっていると思います。
私たちは指定管理者として建物を任されている限りは、しっかり守らなきゃと思っています。
終わりに
守田さんのお仕事への取り組み方や振る舞い、接し方など、たくさん勉強させていただくことがありました。
特に印象に残っているのがお仕事への向き合い方です。
インタビー後守田さんに 元々歴史などはお好きだったのですか? と伺ったところ、特段興味があったわけではなかった、でも、大阪市中央公会堂のことを知っていくうちに大阪市中央公会堂のことも歴史も好きになっていったとおっしゃっていました。
また、守田さんは大阪市中央公会堂の歴史にとても詳しく、わかりやすく教えてくださいました。
好きだからこそ語れる、大阪市中央公会堂への愛を強く感じました。
今回お話を伺った経験から、自分の目の前にあることを大切にし、一生懸命に取り組む努力を怠らないこと、またそのことを楽しむということの大切さを学びました。
簡単にできることではありませんが私も今ある環境を大切にし、精一杯楽しめるようこれからも頑張っていきたいと感じました。
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