京都産業大学の神山天文台様では、2025年3月15日~6月20日に開催された企画展「西村製作所と中村要~反射望遠鏡にかけた夢~」を、3Dウォークスルーで記録・公開しました。
2026年に100周年を迎える「日本での反射式望遠鏡の歴史」を取り上げて、どのようにして国産の反射望遠鏡が作られたのか、人と人との繋がりや当時の技術者たちの天文学や望遠鏡に対する情熱が形になるまでの軌跡が紹介されています。
来館が難しい遠方の方も展示が見られるとともに、貴重な資料を残すアーカイブ、また教育・研究の場で活用できるコンテンツとして、利用されています。
ところで…3Dウォークスルーとは?
バーチャルツアーと呼ばれるものの一つです。インターネット上で遠く離れた場所や空間をまるでその場にいるかのように歩き回ったり、実際の建物をミニチュアのようにして見ることができます。
体験してみてください!
例えば、このような課題をお持ちではありませんか?
・期間限定の展示を、来られなかった方にも見てもらいたい
・展示空間そのものを記録として残したい(写真だけでは全体像が伝わらない)
・展示構成や導線を、次回企画展の改善に活かせる資料がほしい
・学生や実習生に、過去の展示を教材として見せたい
・展示内容を多言語化して、海外からの関心にも応えたい
・Webで過去展示を一覧できる「デジタルアーカイブ」を作りたい
・開催期間外でも、活動を広報・発信できる手段がほしい
これらの課題は3Dウォークスルーで解決できます! それではお話を伺いましょう。
京都産業大学 神山天文台のご紹介

京都産業大学では、本学創設者の荒木俊馬博士が宇宙物理学・天文学の研究者であったことから、開学当初より理学部における宇宙物理学、天文学の教育・研究に力を入れており、全国的にも「宇宙・天文を学べる私立大学」として知られています。
天文台の名称は「京都産業大学神山天文台」とし、私立大学では国内最大(2025年12月現在)となる「荒木望遠鏡」(口径1.3mの反射式望遠鏡)と様々な観測装置、ならびに各種の実験・開発機器を設置しております。
京都産業大学では、神山天文台の施設・設備を学内外の研究者や学生による第一線の研究・教育の場として提供するとともに、荒木望遠鏡を利用した天体観望会などを通じて広く地域の皆さまに開放し、宇宙に親しむ機会を身近にお届けしています。
神山天文台を有効に活用することによって教育・研究の更なる推進を図り、天文学における世界第一級の科学的成果を発信するとともに、大学における社会との接点として、神山天文台が実社会と関わってゆくことを目指しています。
京都産業大学 神山天文台Webサイト https://www.kyoto-su.ac.jp/observatory/

360度カメラで撮影していたが、細部の確認が難しかった
–なぜ導入を決められたのですか?
「1階は展示フロアになっており、天体観測技術や隕石のことなど、常設展示をしています。加えて年に1~2回、企画展を行っています。常設展は当館の所蔵品で行いますが、企画展は学外の貴重な資料を展示します。
もともと360度カメラで、展示やレイアウトの内部用の記録を行っていました。しかし文字を読むには解像度が足りず、細部の確認が難しいという課題がありました。調べてみると、国立天文台や博物館でも3Dウォークスルーが導入されていることを知りました」
3Dウォークスルーの画質は4K!

ここまで拡大できます

展示終了後もいつでも・どこでも見られるように
3Dウォークスルーを導入した目的は「展示を終えたあとも、いつでも・どこでも見られるようにすること」でした。外部用、内部用2つの用途に使われています。

・外部に使う
「アクセスのハードルを無くせることです。期間中は貴重な資料が展示されます。来館が難しい遠方の方や、会期中には訪れられなかった方にも、時間や場所を問わず、展示を楽しんでもらえるようになりました」
・内部に使う
「記録と教育の場面で活用しています。
1.記録:次回の企画展づくりに利用できると思います。資料として記録できることで、検証→改善のサイクルが回しやすくなります。
2.教育:学芸員課程を学ぶ博物館実習生への教育教材として使えます。夏休みの実習では、開催中の展示しか見せられませんでした。3Dウォークスルーで過去の企画展も学べるようになりました。大学においても意義があるものだと思います」
バーチャルツアーの活用方法
展示期間後、京都産業大学 神山天文台のWebサイト上で公開されました。

バーチャルツアー内では、情報タグ(画面上、ピンのようなもの)で展示の解説を丁寧にされています。細かな文字については、写真を入れて補足されています。


バーチャルツアーが来館動機づけに
–利用されてみて、いかがですか?
「バーチャルツアーを見た方から、
『企画展に行きたいと思っていましたが、今年は行けなくて。バーチャルツアーと図録と見比べることができて嬉しいです。次回は直接行きたいと思っています』という感想が寄せられ、来館促進の効果もあるのだと思いました」

多言語・教育コンテンツへの展開にも期待
「今後、神山天文台の活動を知ってもらいたいです」
現在、多言語対応も検討中で、英語版の公開や、ワークシートを組み合わせた体験型学習への展開など、教育現場での新しい活用にも意欲を示されています。

まとめ:3Dウォークスルー導入によって、期待できる効果
・アーカイブの精度向上、資産化
・来られなかった方への情報発信強化
・学芸員実習・教育教材としての活用
・来館促進・動機づけ
次回の企画展は、「星を観る鏡 日々を写す鏡~京都で産まれた反射望遠寫眞機~」と題して、2026年3月21日(土)~6月19日(金)に開催予定。天体望遠鏡とは異なるもう一つの「反射光学系」である”反射望遠写真機”に注目。関西光学工業株式会社(カンコー)の所長・宮澤堂が遺した貴重な記録や資料を中心に、その軌跡をご紹介されます。
前回の企画展「西村製作所と中村要~反射望遠鏡にかけた夢~」のバーチャルツアーと合わせて、現地にも足を運んでみましょう。